テーマ:フランス流!意見を述べるときはこう組み立てよ!
今回の題材:
L’arnacœur(仏=10)邦題:ハートブレイカ―
arnacœurとは、「arnaqueurぺてん師」と「cœur心」をかけた造語。
アレックス(ロマン・デュリス)は、姉とその夫と共に、プロの別れさせ屋として活動する男。カップルの、自分が不幸だとは気付いていない女性の方を誘惑し、女性としての自信を持たせ、「こんなつまらない男と付き合っていたなんて!」と、自主的に別れさせる、というのが、彼のやり方。本当に幸せなカップルには手を出さないのが誇り。
そんな彼が次のターゲットとしてある大富豪から依頼されたのは、彼の娘ジュリエット(ヴァネッサ・パラディ)と数日後に結婚予定のその婚約者を別れさせること。幸せな彼らの仲を裂くのは、彼の主義に反するが、あらがえない事情に巻き込まれ、結局、その結婚を阻止するため、アレックスたちは結婚式を行うモナコへと向かう。
<シチュエーション>
自分の結婚式場に向かう娘(ジュリエット)に、同じ車に同乗している父親(大富豪)が、さらりと今まで言えなかった本音を告げる。
(娘は、アレックスと知り合ったことで、自分の結婚が本当に正しいのかどうか、迷って沈んでいる。)
以下、すべて父親のセリフ。
(おまえは、キャリヤも教養も申し分なく、素敵な女性であることを自ら立証してきた。と語ったあと)
En revanche,
je m’explique pas ce que tu veuilles te prouver en épousant Jonathan.
J’ai rien contre lui.
C’est un type formidable, intelligent, brillant.
Sûrement très gentil.
Mais tu vas t’emmerder avec lui.
だけど、お前がジョナサンと結婚して、何を自分に証明したいのかがわからないよ。
彼が悪いと言ってるんじゃない、
素晴らしいやつだと思うし、頭もよくて、輝かしい男だ。
きっと優しくもあるんだろう。
でも、あんな奴と一緒じゃあ、お前は退屈するよ。
se prouver 自分に証明する。
フランス人にとって、何かをみずから証明するということは大切なのでしょうか。よく聞く表現です。チャレンジャーの精神ですね。
自分に証明したくって、頑張ったのだけど…(ダメだった)、という言い訳にもよく使われる言葉です。
J’ai rien contre lui.
個人的に彼の人格を攻撃している、嫌っているのではない。と一応断わって、それから言いたいことを言うぞ!(又はもう言った)という時に使用。
例)J’ai rien contre toi. あなた自身が悪いわけじゃない、あなたに反対なことは何もない。
といった後、mais(だけど) または、juste(単に…)。などが続き、シチュエーションや、第三者に問題があるように説明します。(が、結局、あんたが悪い。と言っている場合も多い)
Formidable 素晴らしい, intelligent 頭のよい, brillant 輝かしい
歯の浮くような褒め言葉も、連発できるのがフランス語。
ここまで言うと、日本語では皮肉(または不器用な人のお世辞)にしか聞こえませんが、フランス的にはさら~と言ってしまうのがよいでしょう。慣れてくると、この位言わないと物足りなくなります。麻薬効果?
Sûrement きっと
「きっと優しいんだろうな?」と、オレに優しくしてくれたことはないが、お前には優しいのだろう?詳細は知りたくないが…。といった感じの、父親の心情がポロっと漏れてしまった一言。
Mais しかし、でも
フランス的表現の最頻出な一言です。すべてを覆す、この「メ」。褒めて褒めて、持ちあげて~。ガツンとこのひとことで落とします。
フランス人でも、褒められると、「maisメ?(それで、落ちは?)」と、不安になって自分で聞いてしまう人がいるほど。(または、その常套句を使う気だな、とバカにした感じで)
s’emmerder 退屈する、うんざりする(注。一応、かなり砕けた言葉なので、使用する人を選ぶ)
誠実とか、確かな、輝かしい、人を求めるより、とにかく「退屈しちゃダメ!(退屈させるような人はダメ)」というフランス人のエスプリを端的に表しています。
「彼、退屈だから別れようと思う」と家族・友人言っても、「え?あんなにいい人はいないのに、考え直して~!」と反対されることはないばかりか、「実は前からそう思っていたのよ!」と声をそろえて言われます。こわ~~~!
フランス人風、「maisしかし」、の使い方をマスターしよう!!