第2回
テーマ:愛情の裏返し?責める時は、皮肉交じりに。がフランス風。
L’arnacœur(仏=10)邦題:ハートブレイカ―
arnacœurとは、「arnaqueurぺてん師」と「cœur心」をかけた造語。
アレックス(ロマン・デュリス)は、姉とその夫と共に、プロの別れさせ屋として活動する男。カップルの、自分が不幸だとは気付いていない女性の方を誘惑し、女性としての自信を持たせ、「こんなつまらない男と付き合っていたなんて!」と、自主的に別れさせる、というのが、彼のやり方。本当に幸せなカップルには手を出さないのが誇り。
そんな彼が次のターゲットとしてある大富豪から依頼されたのは、彼の娘ジュリエット(ヴァネッサ・パラディ)と数日後に結婚予定のその婚約者を別れさせること。幸せな彼らの仲を裂くのは、彼の主義に反するが、あらがえない事情に巻き込まれ、結局、その結婚を阻止するため、アレックスたちは結婚式を行うモナコへと向かう。
シチュエーション
女性を誘惑して、カップルを別れさせるのが仕事のアレックス。しかし、今回、仕事で誘惑した娘(ジュリエット)に本当に恋をしてしまった。それゆえに彼女に決定的な決断をさせることができず、結局フィアンセの元に置いてきた。そんな弟に、姉がこれからどうするの?と聞く場面。
Sœur – Tes petits mensonge, tes aventures éphémères ?
(に戻るのね?)
Alex – Merci.
Sœur – De rien.
- C’est dommage quand même.
- Pour une fois qu’une fille te plaît.
Alex – Et ouais. Mais elle…
Sœur – Elle quoi ? Elle quoi, Alex ?
Alex -. ..
Sœur – C’était comment la nuit dernière ?
Alex – Un rêve.
Sœur – Oh, c’est pas très grave, de toute façon,
avec ta belle gueule…
T’auras pas de mal à retrouver une Sandrine,
une Karine.. j’sais pas moi, dont t’oublieras le prénom,
un fois que tu coucheras avec elles.
Alex – …
Sœur – C’est vrai ce que disait papa.
Dès que c’est difficile, tu te défiles.
Alex – Vous me faites chier avec ça.
Je me défile pas !Je me défile pas ! Faites chier !
Mari – J’ai rien dit, moi. Pourquoi tu m’engueules ?
(横にいた姉の夫)
Alex – Merde !!
姉 ― また、くだらないウソとつかの間の恋だけの生活に戻るの?
アレックス ― ありがとう。
姉 ―どういたしまして。
―でも、残念だな。
やっと気にいった女の子に出会えたっていうのに…。
アレックス ― まあね。でも、彼女は…
姉 ― 彼女はなに?何なの?アレックス?
アレックス ― …。
姉 ―昨夜はどうだったの?
(注・仕事で彼女を誘惑したため、一晩共に過ごした)
アレックス ― 夢みたいだった。
姉 ―まあ、大したことないわよ。どっちにしろ、あんたのそのいい顔だったら、また、サンドリンだか、キャリーヌだか知らないけど、女の子には困らないでしょうし。そして、一度ベットを共にしたら、名前も忘れて…。
アレックス ―・・・。
姉 ― でも、パパが言ってたことは本当ね。状況が難しくなると、あんたはすぐに逃げるって。
アレックス ― うんざりだよ、お前たちのそういうの!オレは逃げない!オレは逃げてないよ!ばかヤロー!
姉の夫 ―オレ何も言ってないけど。なんで、オレにまで怒鳴るんだよ?(横にいた夫)
アレックス ―クソッ!
(そう叫んで、ジュリエットを連れさりに、結婚式場に向かって、飛び出してゆくアレックス。)
tes aventures 冒険
aventureは「冒険」ですが、この場合、まさに「恋のアバンチュール」の意で使用。また、人生は冒険?の意味で、結構何にでも使用できます。
例)初めて義理の家族と貸別荘で過ごした夏。→このアバンチュール(試み)は失敗だった。 など。
éphémères はかない、つかのまの
一日しか生きない昆虫などに使われます。彼らの人生のはかなさ、無常さを思い浮かべて心情的に使用。
-Merci.(ありがとう)-De rien.(どういたしまして)
皮肉の応酬。ひどいことを言われて、むっとした時に「メルシー」の一言が出てくると、フランス人。
逆にこう言われてしまったら、すかさず、肩をすくめて、「どういたしまして!」。完結したフランス式応酬に、つかの間の満足感を得ることができること、間違いなし。
avec ta belle gueule
いい顔、カッコいい顔、の砕けた言い方。とはいえ、フランス人的に「いい顔」とは、いわゆるカッコいい!というよりは、魅力的(?)。(売れてるフランス人俳優の顔を思い浮かべると…失礼?)
「え、こんな外見のオジサンが、堂々とお誘いを?!」という光景に出会えるのも、人は顔じゃなくて、ユーモアセンス、という暗黙の了解があるゆえん?フランス女性は顔よりユーモアセンスのある男性が大好き❤︎
une Sandrine, une Karine
名前にこのように不定冠詞を付けて、誰だか知らないけど、あるサンドリン、あるキャリーヌなどと使用。
男性だったら、un Eric, un Pierreなど。妻が他の男と食事をした。というのに嫉妬した夫が、「エリックだか、ピエールだか知らないが、誰と何しようがオレは関係ない!」などと、叫ぶ時に利用可。
C’est vrai ce que disait papa. パパが言っていたことは本当だわ。
フランス人に限りませんが、親にこう言われていた。と言われると、全人格がその一言に支配されるように、心が乱れるのが常。ケンカの時の決定打に、これを使うのも便利かも。
上記の場合、兄弟なのでこうなりますが、他人だったらC’est vrai ce que disait ta maman.(あなたのママが言っていたことは本当だわ)など。(その後の関係修復は無保障)
se défiler 逃げ出す。の話し言葉
faire chier ~ ~をうんざりさせる。俗語。
よく使われるが、下品な言い方。使う人、状況を選ぶことが大切です。
普段は上品にしていても、突然ポロっと、こんな風に言われるとドキッとします。発言にインパクトを出すために、メリハリを持たせるのもよいでしょう。
また、こういう言葉を連発していると、上品な人は寄ってこなくなります。上品だけど、気にいらない人にしつこく付きまとわれたら、事あるごとにこれを連発してみれば、そのうち事態は収拾します。
J’ai rien dit, moi.
ここでは、姉がイヤミを言っているのに、腹を立てたアレックスが、「お前らうんざりだ!」と、横にいた夫まで、ひとからげに怒りをぶつけているのに抗議しています。「オレ、何も言ってないんだけど…」と、とぼけた感じが、彼のキャラともピッタリあって、笑いを誘います。
誰かに不条理に怒鳴られたりしたとき、とっさに「何も言ってないんだけど」「何もしてないんだけど(J’ai rien fait, moi.)」と、周りの人の笑いを誘うように、肩をすくめて言ってみましょう~。
フランス人風、皮肉の応酬。そして、不条理に責められた時のフランス的なかわし方をマスター!